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経堂の流し その1

いまだに"流し"のおじさんがやってくる経堂界隈

時代が昭和だった頃、ギター片手に呑み屋を渡り歩き、歌と演奏を聴かせたり、客の歌の伴奏をする”流し”は、日本中の繁華街で見られました。


しかし、そんな”流し”もカラオケの普及とともに、まるでトキのように数が減り姿を消してしまいました。それなのに、経堂には、いまだに”流し”のオジサンがやってくるといいます。


”流し”に遭遇したことがあるという経堂在住の小林哲也さんに目撃スポットを案内してもらいました。


小林さんは、『出没!アド街っく天国』などのお仕事をされている放送作家さん。小林さんが向かったのは、城山通り沿いにあるスーパー「ライフ」の前にあるサソリのマークのお店「Cor Scorpii」でした。

美人ママに伺うと「今夜あたり来るかも」とのお言葉。我々取材班は、この店のカウンターで、待つことにしました。流しのオジサンは、来る日もあるけど、来ない日もあるということでした。


なかなかやってきません。


が、我々が今夜は無理かなと諦めかけた時、バタンと城山通りに面した木の扉が開きました。あきらかにお客とは違う独特のオーラが店内に吹き込んできました。現れたのは、ライフのロゴマークの輝きを背に受けた丸みを帯びたシルエット。ギターを抱えています。おお~っ!これは正真正銘の流しのオジサンに違いありません。


続いてカウンターにドサッと音がしました。見ると、年季の入った歌謡曲の本。


「その中の曲は なんでも大丈夫ですから。なんでも歌っていいよ」というオジサンの声。


おもむろにページをめくってみると、『陸軍士官学校々歌』


大正10年の歌です。 これは無理です。古すぎます。

取材班「もっと新しいのないんですか?」

オジサン「じゃあ昭和63年の曲がありますよ」

昭和63年というと、1988年。

取材班「どんな曲ですか?」

オジサン「二代目無法松の一生!」

一体これからどうなるのか?そんな戸惑いと共に城山通りの夜はふけてゆくのでした。

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